発達障害児とその家族のためのドッグセラピープログラムとその評価方法

前田奈保  Naho Maeda 1)
安江 健  Takeshi Yasue 2,5)
秦実千代  Michiyo Hata 1)
河原 聡   Satoshi Kawahara 1)
坂入和也   Kazuya Sakairi 3,5)
大野真裕   Masahiro Ohno 4,5) 
小田切敬子 Keiko Odagiri 1,5)

1)東京コミュニケーションアート専門学校・東京都、2)茨城大学農学部・茨城県、3)県立友部病院・茨城県、4)福祉相談センター・茨城県、5)NPOアニマルセラピー協会・茨城県

-はじめに-
 発達障害は状態像が多様である上に同じ診断名であっても子供たちの個性や発達はさまざまである。そのため発達支援においては個別のプログラムが重要であると考えられる。一方、イヌは家畜化の歴史において改良を続けられ、今や300犬種以上が存在し、体のサイズ、毛色、気質においても多様である。そのためイヌを用いれば、発達障害にあわせた個別のプログラムを作成しやすい。しかしながら本来ヒトもイヌも社会性があり、集団場面において仲間意識を持ちながら個別の目標を達成する能力を持っている。これらの点を踏まえて、我々は発達障害児とその家族のためのドッグセラピープログラムを茨城県阿見町の公民館で実行してきた。そこで昨年の本学会での発表に引き続きプログラムについて報告する。またそれに対する子どもたちの行動の評価方法についても併せて紹介したい。

-ドッグセラピーの実践方法-
 ウェルシュコーギー・ペンブローグ、ミニチュアダックスフンドを主体に他10犬種を使用した。1回の参加犬は7〜12匹であった。ドッグセラピーの対象は自閉症、脳性麻痺、ウェスト症候群、学習障害、軽い自閉傾向と診断された子どもたちとその兄弟姉妹(健常)であり、5〜13歳であった。1回の参加子どもは9〜13人で、1人の子どもに対して1〜2人の担当者が付き添った。1年間の長期プログラムを実行した。プログラムを四季に応じた内容にするため、気候の良い春と秋には屋外での課題を組み込んだが、夏と冬は屋内だけで実行した。時間は午前11時から正午までであった。
(1) プログラムの内容と課題の実行方法
通常の1時間のプログラムには最低4種類[1-非接触 2-接触(抱く、撫でる) 3-ブラッシング 4-ウォーキング]の課題を組み込んだ。2〜4の課題を子どもたちに実行させる直前に、まずドッグトレーナーおよびトリマーが簡単な実演と説明をした。次に子どもの付き添い者がそれを模倣して見せ、その後、子どもたちに実行するように促した。子どもがうまく課題をこなしたときには、すぐに褒め、子どもの行動を強化した。また、通常の課題をこなすプログラムとは別に、1年の後半にはイヌと遊ぶゲームプログラムを導入した。
(2) 子どもの行動の評価
行動の評価は子どもの付き添い担当者の記述式記録によるものと、イヌ担当者と子ども担当者の2名による評定式評価によるものを用いた。評定式評価では本プログラムに合わせて、イヌとの1-全体的な係わり 2-接触 3-ウォーキング 4-ブラッシング 5-その他、について5〜6段階に評定した。また後日、子どもの行動を確認するためにビデオによる記録も併用した。

-まとめ-
 公共の場所に子どもとその家族、イヌおよびスタッフが一同に集まり、1年かけて進めるプログラムは概ね確立してきた。ただしグループワークの中に個別プログラムを組み込む難しさは、依然残っている。しかしながら一人の子どもが、我々の予想を超えた課題における成果を上げた時、それによる他の子どもや家族およびスタッフに及ぼす精神的効果は大きい。そのため、グループワークの魅力も、なお残っている。今後はより多くの子どもたちに対応できるドッグセラピープログラムの開発とその評価方法の検討をしていきたい。
本研究は社会福祉・医療事業団の子育て支援基金およびeparts FCMSリユースPC寄贈・支援プログラムの援助により遂行された。また、TCA2年アニマルセラピーコースおよび1年動物福祉コースならびにロッキーハウス坂田文太郎・純子両氏ほか多くの協力を得た。深謝します。