2002年「ヒトと動物との関係学会」

茨城県阿見町での発達障害児に対するアニマルセラピー

 ●石澤千佳子・・・1)
 ●佐藤  勇・・・1)
 ●坂入 和也・・・2)
 ●坂田文太郎・・・3)
 ●安江  健・・・4) 6)
 ●大野 真裕・・・5)
 ●小田切敬子・・・1) 6)

Text by , Chikako Ishizawa,Isamu Satoh, Kazuya Sakairi, Buntaro Sakata,Takeshi Yasue, Masahiro Ohno, Keiko Odagiri

1)東京コミュニケーションアート専門学校・東京都、2)県立友部病院・茨城県、3)つくば国際ペット総合学院・茨城県、4)茨城大学農学部・茨城県、5)福祉相談センター・茨城県、6)NPOアニマルセラピー協会・茨城県

-はじめに-
 私達は、茨城県阿見町で発達障害児を対象にイヌを主に利用したアニマルセラピーを行なってきた。アニマルセラピーを始めて1年半が経過し、この間、対象児、実践スタッフおよびイヌの参加入れ代わりはあったものの、レギュラーメンバーによるものへと確立してきた。また、発達障害児の行動に変化がみられるようになり、私達はアニマルセラピーの効果を実感できるようになった。そこで、私達が実践してきたアニマルセラピーの効果の一部を紹介したいと思う。


-方法-
 1999年8月から2002年1月までに11回のアニマルセラピーを、茨城県稲敷郡阿見町総合保健福祉会館において実践した。参加対象児は発達障害(精神発達遅滞、ダウン症候群、自閉症など)の子供達(10〜17人)とその兄弟(5〜7人)であった。参加動物はイヌ(8〜10匹)が中心であった。イヌはドッグトレーナーが所有、あるいはつくば国際ペット総合学院でトレーニングされている個体であった。参加スタッフは、専門学校生、研究者(行動学)、臨床心理士、看護士、ドッグトレーナーなどで、1回につき35〜40人が参加した。子供1人に対して1〜2人の担当者が付き添った。実践時間は11時から12時までとし、その間の子供達とイヌの行動の記録をとった。また、イヌの脈拍測定も行なった。さらに参加保護者にはアンケートを実施した。


-結果および考察-
事例(1)
 知的障害で言葉がなく、視線が一定しない男の子(17歳)の笑顔が著しく増し、穏やかになった。彼の母親から担当学生に対するねぎらいの言葉が出るようになった。
事例(2)
 寝たきり状態でほとんど自発行動のでない女の子(11歳)の発声が増加した。またイヌのリードを握ったり、イヌをヒザにおいて抱かせると、声をあげて笑顔を見せた。
事例(3)
 初回参加時にはイヌにほとんど触れなかった自閉症の男の子(11歳)が、イヌの様子を横目で見ながらイヌに合わせて散歩が出来るようになった。

 このように参加子供達の効果には目を見張るものがあった。このことが家族の心を解きほぐし、精神を穏やかにさせた。また、子供達とその家族の行動の変化が私達のやりがいを引き起こし、私達に元気を与えてくれた。さらに事前に参加イヌのテンションが上がり、アニマルセラピーの場面を楽しんでいるようであった。阿見町でのアニマルセラピーは、すべての参加者と動物を穏やかにし、幸せを与えてくれるものであった。


*本研究は、東京コミュニケーションアート専門学校アニマルセラピーコース1年22名の参加によって行われた。


発達障害児とその家族に対するアニマルセラピープログラム

 ●押野 美紀・・・1)
 ●佐藤  勇・・・1)
 ●坂入 和也・・・2)
 ●坂田文太郎・・・3)
 ●安江  健・・・4) 6)
 ●大野 真裕・・・5)
 ●小田切敬子・・・1) 6)

Text by Miki Oshino, Isamu Satoh, Kazuya Sakairi, Buntaro Sakata,Takeshi Yasue, Masahiro Ohno, Keiko Odagiri

1)東京コミュニケーションアート専門学校・東京都、2)県立友部病院・茨城県、3)つくば国際ペット総合学院・茨城県、4)茨城大学農学部・茨城県、5)福祉相談センター・茨城県、6)NPOアニマルセラピー協会・茨城県

-はじめに-
 アニマルセラピーは、対象者だけでなく、彼らの回りを取り巻く人々を巻き込むことが成功の鍵を握っていると思われる。また、実践スタッフがより意欲的にアニマルセラピーに取り組むためには、優れたプログラムの導入が必要である。そこで我々は、茨城県阿見町の総合保健福祉会館で発達障害児とその家族を対象に独自のアニマルセラピープログラムを開発し、実践したので報告する。


-方法-
 発達障害児とその家族に対してアニマルセラピーを実践した。プログラムは対象家族にはがき連絡することから始まった。担当学生による電話での出欠確認後、名簿の作成、タイムスケジュールと個別プログラム、およびBGM、VTR、受け付け担当者を決定した。参加動物はイヌ8〜10匹、ネコ1匹、ブタ1匹であった。参加イヌとブタは、専門学校で健康管理およびトレーニングされた個体であった。ネコは特別なしつけを受けていない家庭ネコであった。実施30分前にミーティングをした。その後、子供達の出迎えと参加受付をした。アニマルセラピーは11時から12時までとした。自己紹介の後、イヌが入室し、アニマルセラピーを開始した。20〜30分間ふれあいを実施した後、個別プログラムを実践した。個別プログラムでは
(1)イヌをさわって抱けること
(2)リードを引いて散歩できること
(3)イヌのブラッシングができること
(4)イヌに食べ物を手から与えられること
などを課題とした。アニマルセラピー終了直前にはアンケートを実施し、終了後は子供達の見送りをした。気候の良い時には屋外散歩、クリスマスの時期にはイヌと遊べるゲームをプログラムに組み込んだ。


-結果および考察-
 電話で参加確認をすることによって、我々と家族とのコミュニケーションがスムーズになり、アニマルセラピー当日の会話が増えた。また、父親が積極的に参加するようになった。家族の積極性が子供の行動改変を促進し、子供の行動改変がさらに家族の気持ちを積極的にさせた。また、プログラムの導入によってスタッフの動きがスムーズになった。今後は参加子供と家族の希望に対応できる、より多くのプログラムメニューを開発したい。


*本研究は本校アニマルセラピーコース1年22名の参加によるものである。


子供たちのお見送りをするセラピーコースの学生たち